本
- 作者: 渡辺澄夫
- 出版社/メーカー: コロナ社
- 発売日: 2012/03
- メディア: 単行本
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昨日の本が確率の哲学について語ったものだとすれば,今日の本は確率の実践についての本だと言えるだろう.統計的推測法の一つであるベイズ推測について,定義から性質・他の推測法との比較までコンパクトにまとめている.
正直コンパクトすぎて理解が追い付かない.論理展開を追う限りでは無茶苦茶なことはしてはいないと思うけど,行間を埋めるのがひたすら大変.これが数学書という奴なのかなあ.やればできる所はまだましだが,3章の途中から完全に数学が分からなくて死んだ.
とはいえ,各章末の問答集や第7章のような定性的なことを記述してある部分は十分理解できるし,深みが深い.統計的推測は全て不良問題であり,恣意的な選択無しには為され得ないという主張は面白かった.最尤推定にしてもベイズ推定にしてもそれを選ぶ必然性は無く,恣意的に手法を選んだのに過ぎないのである.しかし,手法の選択が全く恣意的であったとしても,手法の良し悪しを評価することができる.これこそが統計学の目的であるというのが,この本の大きなテーマである.
本書を読む前の自分は,統計的推測そのものがどういう基盤に立っているのか分からず胡散臭く思っていたのだが,本書の説明はその疑問を晴らしてくれた.その意味で,僕は本書にとても感謝している.また,本書は統計学を推測だけではなく,情報科学における機械学習にも応用できるツールとして説明している.僕はこれまで統計的推測と同様に機械学習に対しても完全に斜に構えていたのだが,本書の立場に触れて否定的な感情は消失した*1.今では機械学習も情報の獲得モデルの一つかなあという気持ちになっている.
評価:📝📝📝📝📝
数学をやりましょう.
*1:scikit-learnとかchainer触ったのもありそう