本
- 作者: イアン・ハッキング,広田すみれ,森元良太
- 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
- 発売日: 2013/12/21
- メディア: 単行本
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下半期一番影響がデカかった大賞
人類史上で,確率が今僕たちの知っているような姿として初めて表れたのは1660年頃だと言われている.この時期に,パスカルや(名前忘れた)といった人物が独立に確率概念を形成していったのだ.この本はまさにその確率が登場する瞬間において,どのような状況が確率概念の形成に関わったのかを考察している.
例えば,1660年以前は「probable」という言葉は今我々が使うのとは全く異なる用法であったという.当時は,「(権威のある人間や書物が)裏付けている」という風に使われていたそうだ.このような証言としての「probability」が,錬金術や医術*1と結びつくことによって,(自然が示す)「証拠」という概念が誕生し*2,「証拠」の確からしさが確率へと結びついていく――ハッキングの提示するストーリーは極めて刺激的であり,それでいて彼の提示する「証拠」は論理展開を突飛でないものとしている.
他にも,確率についての様々な哲学的トピックを網羅している.例えば,確率の主観性と客観性についてだ.その中でも一番印象に残っているのは,確率の事象への割り振りには恣意性があるという事実だ.本書では,マクスウェル・ボルツマン統計とボース・アインシュタイン統計のどちらに粒子統計が従うかという問題について,最終的には経験則を持ち出さざることを得ないことから,確率が恣意的に事象に割り振られるということを主張していた.この主張は「確率はいかに定まるのか」という僕が関心を持っていた問題について合理的な回答であり,腑に落ちたのをよく覚えている.この問題の詳しい内容については
pandaman64.hatenablog.jp
を参照のこと.
評価:⭐⭐⭐⭐⭐
良い本だった.