幸運の黒い白鳥を探そう 『ブラック・スワン』

本 Advent Calendarの3日目の記事です.
adventar.org

今日は『ブラック・スワン』上下巻を紹介します.

この人*1は「経済学者」が大嫌いなんだなあというのがビシビシと伝わってくる本です.

最初に,人間がいかに誤った説明をしてしまうかを示していきます.
人は事象が発生した後に説明を後付けしがちであり,その説明も分かりやすい・見えやすいものに引きずられてしまいます.
そのように間違ったモデルを構築し,それで現実が説明できたと安心してしまうのが人間なのです.

この問題が大きく関わってくるのが経済学の領域です.
富には更に富が集まってくるものです.このような性質を持つものをscalable*2と言います.
scalableな世界では勝者が成果を総取りしていきます.
その結果生じる分布は正規分布*3から外れてしまい,特に分散*4が発散してしまいます.
このような状態をNNTはワイルドと言っています.
ワイルドな世界で「経済学者」が良く使う定理*5が力を発揮できません.
しかし,「経済学者」はそのような定理を使って金融商品や経済のモデル化・予測をしているのです.
その結果生じるのが題名にも取り上げられる「黒い白鳥」,すなわちモデルから逸脱した現象です.

黒い白鳥は破滅的な現象を引き起こすこともあります.
例えば,2008年のリーマンショックは黒い白鳥の例に挙げられるでしょう.
確かに思われた金融市場は,あっけなく崩壊し世界不況を引き起こしてしまいました.
モデル化がより詳細になればなるほど,モデルの構築時に覆い隠してしまった不確実性,黒い白鳥はどんどん大きくなってしまいます.
破滅的な崩落は近年になるにつれてより現実的なものになっているのです.

しかし,黒い白鳥は悪いことばかりではありません.
世界がscalableであることは,誰もが頂点に立つチャンスを得ることができるのです.
世界の頂点は一部によって占められていますが,ひとたび良い黒い白鳥が裾に止まると,その顔触れは10年ぐらいで変わってしまうのです.

そのような世界では,良い黒い白鳥を得るチャンスに触れ続けることが大切だとNNTは説きます.
これは投資だけでなく,人生を生きていく上でも当てはまることでしょう.
やっていくぞ.

*1:ナシム・ニコラス・ターレブ,以下NNT

*2:日本語訳で拡張可能.IT系だとスケーラブルとよく言うね

*3:原文だとベル型カーブ

*4:NNTが大嫌いな言葉

*5:中心極限定理とか