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計測における誤差解析入門

計測における誤差解析入門

教科書の参考文献によく出てくる本です.不確かさの取り扱いについてかっちりした事を知りたくて読みました.

うーん.知らない内容は余り無かった記憶がある.χ^2分布の辺りは読まなかったのでよく知りません.
不偏性を持たせるために標本標準偏差の割る数を$N-1$にする理由とか知りたかったのですが,統計学の本を読むべきなのかしら.

練習問題も沢山あるし一からやりたい人には良いかもしれません.

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物理法則はいかにして発見されたか (岩波現代文庫―学術)

物理法則はいかにして発見されたか (岩波現代文庫―学術)

確かに読んだんだが内容がおぼろげ大賞

ファインマンの講演を文字起こしした本です.物理法則がどのようなものなのか,現在知られている物理法則の勘所である保存量と対称性はどのように結びついているのか,彼の軽快で分かりやすい話しぶりには引き込まれてしまいます.

後半では彼がノーベル賞を受賞した経路積分や量子電磁気学について,どのような過程で研究し発見に至ったかを語っています.細かい所は覚えていませんが,直観で理論のギャップをエイヤと乗り越えてしまう所はわくわくしました.

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[1604.02603] Information, Processes and Games

Twiiterで流れてきた大賞

論文の形式をしているけれども,本人がHandbookだと言っているので本です*1


「情報を得る」とはどういうことなのでしょうか.この問いに答えるには,情報の変化を扱えるような学問,すなわち「情報動力学(Information Dynamics)」が必要となります.このハンドブックでは,情報動力学の構成に向けて,現在までに構築された情報に関する(計算機科学の)理論を振り返り,簡単な解説を与えています.特に領域理論や論理学,ゲーム意味論といった話題に詳しいです.

僕はこのハンドブックを読んで「情報とは何か」という問いに強く惹かれるようになりました.いつか非自明な回答を返せる人間になりたいですね.日々精進. 今日も一日ありがとうございます.

*1:こういうのをサーベイ論文というのかしらん

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最高

1巻読了後:

最新刊まで読んだ後:

最高.特別になりたいんだけど特別じゃないのが特別で特別になってしまうと特別になれないって百合なんだよな…

評価:尊尊尊尊尊
最高.

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コンパイラ―原理・技法・ツール (Information & Computing)

コンパイラ―原理・技法・ツール (Information & Computing)

言わずと知れた名著大賞

今年の初めD言語の.NETバインディング作るぞーとなっていた時期があり,まずは簡単に言語自作してからだろうと読んでた.これは完全に気のせいで,ドラゴンブック読んでたの去年の10月だった.まあ気にしないことにしよう.

その時の成果物がこれ
github.com

F#+FParsecでパースして後はC#で意味解析+コード生成..NETはリフレクションが標準ライブラリでカバーされていてバイナリ生成からマシン語の出力まで簡単にできる.で,文とか関数宣言とか変数宣言とかはできるようにして,main関数で1+1とか計算して関数の戻り値がexeのステータスコードになってるぞやったーという所までは到達したんだけど,Hello Worldのために文字列を導入しようとしたら,型の扱い方が良くわかんなくなって無になった.

具体的に読んだ場所は構文解析からコード生成の辺りだったと思う.後半の最適化とかの所は全然読んでない.ドラゴンブックは文脈自由文法でパースしてレジスタマシンのコード生成をする流れなので,PEG*1+スタックマシン*2でやったC±には直接活かせない部分も多かった.基本ブロックを用いた意味解析の所とかは参考になったかな.やっぱりスタックマシンはサイコーだよ,AST舐めてその順に命令発行して終わり!だからね.

評価:✅✅✅
目的には合わなかったけれども勉強にはなった.虎本とか他のコンパイラ本も読んでみたいね.

http://amzn.asia/bWZ8TBe
このURLに意味はあるのでしょうか.決めるのはあなたです.

*1:Parsing Expression Grammar

*2:.NETなので

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ベイズ統計の理論と方法

ベイズ統計の理論と方法

今年度もっとも訳分からん大賞

昨日の本が確率の哲学について語ったものだとすれば,今日の本は確率の実践についての本だと言えるだろう.統計的推測法の一つであるベイズ推測について,定義から性質・他の推測法との比較までコンパクトにまとめている.

正直コンパクトすぎて理解が追い付かない.論理展開を追う限りでは無茶苦茶なことはしてはいないと思うけど,行間を埋めるのがひたすら大変.これが数学書という奴なのかなあ.やればできる所はまだましだが,3章の途中から完全に数学が分からなくて死んだ.

とはいえ,各章末の問答集や第7章のような定性的なことを記述してある部分は十分理解できるし,深みが深い.統計的推測は全て不良問題であり,恣意的な選択無しには為され得ないという主張は面白かった.最尤推定にしてもベイズ推定にしてもそれを選ぶ必然性は無く,恣意的に手法を選んだのに過ぎないのである.しかし,手法の選択が全く恣意的であったとしても,手法の良し悪しを評価することができる.これこそが統計学の目的であるというのが,この本の大きなテーマである.

本書を読む前の自分は,統計的推測そのものがどういう基盤に立っているのか分からず胡散臭く思っていたのだが,本書の説明はその疑問を晴らしてくれた.その意味で,僕は本書にとても感謝している.また,本書は統計学を推測だけではなく,情報科学における機械学習にも応用できるツールとして説明している.僕はこれまで統計的推測と同様に機械学習に対しても完全に斜に構えていたのだが,本書の立場に触れて否定的な感情は消失した*1.今では機械学習も情報の獲得モデルの一つかなあという気持ちになっている.

評価:📝📝📝📝📝
数学をやりましょう.

*1:scikit-learnとかchainer触ったのもありそう

確率の出現

確率の出現

下半期一番影響がデカかった大賞

人類史上で,確率が今僕たちの知っているような姿として初めて表れたのは1660年頃だと言われている.この時期に,パスカルや(名前忘れた)といった人物が独立に確率概念を形成していったのだ.この本はまさにその確率が登場する瞬間において,どのような状況が確率概念の形成に関わったのかを考察している.

例えば,1660年以前は「probable」という言葉は今我々が使うのとは全く異なる用法であったという.当時は,「(権威のある人間や書物が)裏付けている」という風に使われていたそうだ.このような証言としての「probability」が,錬金術や医術*1と結びつくことによって,(自然が示す)「証拠」という概念が誕生し*2,「証拠」の確からしさが確率へと結びついていく――ハッキングの提示するストーリーは極めて刺激的であり,それでいて彼の提示する「証拠」は論理展開を突飛でないものとしている.

他にも,確率についての様々な哲学的トピックを網羅している.例えば,確率の主観性と客観性についてだ.その中でも一番印象に残っているのは,確率の事象への割り振りには恣意性があるという事実だ.本書では,マクスウェル・ボルツマン統計とボース・アインシュタイン統計のどちらに粒子統計が従うかという問題について,最終的には経験則を持ち出さざることを得ないことから,確率が恣意的に事象に割り振られるということを主張していた.この主張は「確率はいかに定まるのか」という僕が関心を持っていた問題について合理的な回答であり,腑に落ちたのをよく覚えている.この問題の詳しい内容については
pandaman64.hatenablog.jp
を参照のこと.

評価:⭐⭐⭐⭐⭐
良い本だった.

*1:ここで現れるのが物理のような自然科学ではないのにも理由がある.なぜならば,そのような「高級科学」は不確かな証拠概念を採用しようとはせず,第一原因からの推論によって結論を得ようとしていたからだ.

*2:それまでには「証拠」という概念すら存在しなかったのだ!