本『実力も運のうち』

『実力も運のうち』を第一章まで読んだ。

まず、能力主義の道徳的問題の指摘はするどい。

自分の才能のおかげで成功を収める人びとが、同じように努力していながら、市場がたまたま高く評価してくれる才能に恵まれていない人びとよりも多くの報酬を受けるに値するのはなぜだろうか?
マイケル サンデル. 実力も運のうち 能力主義は正義か? (p.39). 株式会社 早川書房. Kindle 版.

つまり、他の人が評価してくれるような実力を手に入れられるかはまさに運しだい、というわけだ。 この事実を迂回して能力主義の正当化をするのは難しいと思う。

一方で、能力主義がもたらす政治的問題の部分は納得がいっていない。すなわち、能力主義が共通善を貧相なものにし、社会におごりと屈辱を生むことで分断をもたらしポピュリズムの糧となる。 このプロセスには正当化が足りておらず、どうしても陰謀論めいて見えてしまう。第二章でこの話題を取り扱いそうなので今後に期待。

また、サンデルの取り上げる共通善が一体何なのか分からない。そのうち取り上げられるだろうからこれも今後に期待。